飲食店における消防法の手続き
飲食店の営業や風俗営業を開始する際は、消防署への各種届出が必要になります。消防法は、これまで、災害が発生するたびに規制が強化されてきました。飲食店や風俗営業では不特定多数の人が出入りするため、火災が起きた場合は大惨事になりやすく、消防署も目を光らせています。
消防法による規制
防火対象物
消防法が規制対象とするものは主に防火対象物です。防火対象物とは、消防法2条において、次のように定義されています。
「防火対象物とは、山林又は舟車、船きよ若しくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物若しくはこれらに属する物をいう。」
原則として、建物はすべて防火対象物ということになります。そして、不特定多数の人が出入りする用途の建物のことを特定防火対象物といいます。飲食店やキャバクラ、ホストクラブなどは、特定用途の防火対象物(またはその部分)となります。
防炎防火対象物
消防法では、燃えにくい性能を有するカーテンやじゅうたんなど(防炎対象物品)の使用を義務付けた防火対象物を、防炎防火対象物として規制しています。不特定多数の人が出入りする特定防火対象物も、防炎防火対象物として規制の対象となっており、防炎物品には「防炎」の表示をつけることとされています。
消防署への届出
防火対象物使用開始届出
新たに防火対象物の使用を開始するときや、テナントを変更するときに、管轄の消防署に届け出るものです。使用開始日の7日前までに提出するものとされていますが、使用開始前に消防署の検査が入ることもあり、なるべく早めに提出するよう推奨されています。
届出者は、防火対象物を使用(変更)しようとする者であり、建物全体を使用する場合だけでなく、一部を使用する場合も含まれます。つまり、飲食店や社交飲食店を営業する場合は、必ず提出することになるものです。
防火管理者選任届
防火対象物の防火上の管理を行う者を防火管理者といい、建物の収容人数と用途によって防火管理者を設置する必要があります。特定用途の防火対象物については、防火対象物全体の収容人数が30人以上のものが対象となります。そして、防火管理者が必要な建物では、建物所有者及びすべてのテナントで防火管理者の選任が必要となります。つまり、収容人数30人未満の飲食店であっても、防火管理者を選任する必要があるケースが多いということです。
消防計画
防火管理者に任命された者は、消防計画を作成して、消防計画作成届出書と一緒に提出する義務を負います。多くの消防署では、消防計画のひな型があるので、それに加筆する形で作成することができますが、自主防災隊の編成や自主検査など、項目が多岐にわたります。
防火対象物点検報告制度
建物のオーナー等は、次の要件に該当する場合には、年1回、有資格者(防火対象物点検資格者)に点検を依頼し、消防署に報告することが義務付けられています。
1.収容人数30人以上300人未満
・3階以上か地階に店舗がある
・屋内階段が1つしかない(屋内になくても屋外に1つあれば免除)
2. 収容人数300人以上
点検資格者は、次のような項目を点検します。
・防火管理者を選任しているか。
・防火対象物品に防炎性能を有する旨の表示がされているか。
・防火戸の閉鎖に障害となるものが置かれていないか。
・避難施設に避難の障害となる物が置かれていないか。
消防法の手続きについては、オーナーや内装業者が手配してくれるケースが多いので、確認してください。火災を未然に防ぎ、お客様や従業員の安全を守るためにも、しっかりと手続きをしておきましょう。